〈企業概要〉
AIワークスペース「Genspark」を提供している米MainFunc(メインファンク)の日本法人。Gensparkはスライド作成やメールの仕分けなど、自然言語による指示で業務を遂行できる。グローバルではリリースから12カ月でARR(年間経常収益)2.5億ドルを達成。米本社は2023年に、日本法人は25年に設立された。
労働人口不足の対策として、業務特化型のAIに期待が集まっている。Gensparkは3月、同社のAIワークスペース「Genspark」上で業務プロセスを実行する「Genspark Claw」機能をリリース。「24時間稼働するバーチャル社員」と位置付け、企業の人手不足解消を目指す。法人向けの展開に向けてセキュリティーも整え、国内では販売パートナーの開拓と連携強化を通じて、さらなる成長を目指す。
(取材・文/南雲亮平)
AIが協働する基盤を構築
Gensparkは、「ChatGPT」「Gemini」「Claude」などを含む70以上のAIモデルを統合した業務特化型のワークスペースだ。ユーザーが自然言語で業務を指示すると、自律的にタスクを分解し、複数のAIモデルからタスクごとに最適なものを選択して自動でプロジェクトを実行する。需要の大きいスライド作成業務の場合には、ChatGPTが文章、Geminiが画像、Claudeがタスクの構成を担当する、といった流れで進行することができる。
エリック・ジン
Co-founder&CEO
特徴的な機能として、3月から提供を開始した「Genspark Claw」がある。これは、複数のソフトウェアを活用する業務プロセスを社員に代わってAIが実行するツール。「LINE」「Teams」「Slack」などのコミュニケーションツールと連携することで、会議の設定や特定テーマに関する調査レポートの作成などを、チームメンバーに話しかけるようにチャットでAIへ依頼できる。
当初はクラウド上で提供していたが、4月にはデスクトップ向けの「Genspark Clawアプリ」をリリースした。これにより、ローカルPC上でも利用できるようになり、ファイルをクラウドにアップロードすることなく、PC内のファイルやデータ検索、編集をAIに依頼できるようになった。さらに、「Microsoft Office」内にネイティブプラグインとして組み込まれたため、より利用しやすくしている。
BtoB向けSaaSとの連携も強みとする。「Salesforce」などのワークフローと連携すれば、顧客とのやり取りの内容を定められたルールに従い、自動で指定のSaaS上にアップロードすることも可能だ。
国内企業が重視するセキュリティーにも注力している。Gensparkは、情報の機密性・完全性・可用性の三つを備え、情報を有効活用するための管理体制を構築・運用していることを示す情報セキュリティーマネジメントシステム(ISMS)の国際規格「ISO 27001」や、米国公認会計士協会(AICPA)が定めた基準に基づき、信頼性やデータセキュリティーの管理策が一定期間(半年以上)適切に運用されていることを証明する「SOC 2 Type II」といった認証を取得している。
また、法人向けプランではゼロトレーニングポリシーを適用し、企業が活用しているデータを学習に使用しないよう設計。Gensparkがアクセス可能な範囲を設定することもできる。
米国本社のCo-founder&CEOで、日本法人の代表も兼ねているエリック・ジン氏は「安心して使っていただける環境を構築した」と述べた。
パートナー開拓を推進
米国本社は日本を重要な市場と位置付けている。ジンCEOは「セールスやマーケティング、ローカルスタッフの追加採用など、今後2~3年で1億ドルを超える投資を行う計画」と説明する。日本に注力する理由については「日本の企業は労働力不足や採用難に悩んでおり、常に働いてくれる“社員”がいれば人手不足の解消につながるはず」と、日本企業とAI社員の相性の良さを強調した。
国内でもすでにさまざまな業務向けAIプロダクトが登場しているが、「劇的に生産性を上げることは難しく、経営にインパクトを与えるほどの成果を出せていない」とジンCEOは指摘する。課題として「AIを社内に浸透させる方法がわからない」「AIモデルの進化が早く、その都度の教育では対応が追いつかない」などの悩みを挙げた。
これに対し、Gensparkは普段チームで利用しているチャット内で一緒に仕事ができるため「生産性が10倍ほど上がる」と自信を示す。生産性の向上により浮いた時間で新たなことに取り組むためのサポートもしていく方針だ。料金は月内利用分のクレジットを事前購入する買い切り型で、想定外の出費が発生する心配はない。不足分は追加購入が可能だ。
法人向けに提供するプランは、全社規模・大規模組織に向けた「Enterprise」と、中小企業・部署導入を想定した「Team」の二つ。この内、ソースネクストは2~150人規模の利用に最適化したTeamプランを、導入・運用サポートを含めて提供する。
ジンCEOは「独占契約ではないので、オープンにパートナーを探したい」とし、販売チャネルの拡大を目指す。メインファンクのメンバーはグローバルで約70人であり、国内企業への導入支援やカスタマーサポートを提供するためにも、連携するパートナーの存在が不可欠だと述べた。