SI事業を手がける大手電機メーカー3社の2025年度上期(4~9月)の決算が出揃った。各社とも提案型のDX支援サービスの拡大や、モダナイゼーションの継続的な需要をとらえ、増収増益で推移している。順調に業績を伸ばす中で、持続的な成長を見据え、次のアクションを仕掛けている。
(取材・文/南雲亮平、春菜孝明、堀 茜)
富士通
調整後営業益が過去最高 Uvanceがさらに拡大
富士通は、売上収益が前年同期比0.9%増の1兆5665億円とほぼ横ばいだったが、調整後営業利益は83.6%増の1213億円を記録し、上期の調整後営業利益としては過去最高を更新した。当期純利益は、富士通ゼネラルと新光電気工業の売却により2263億円増の2620億円と、大幅な増益となった。中期経営計画の最終年度となる25年度は通期で営業利益は過去最高の3600億円、営業利益率10%超えを目指している。磯部武司・副社長CFOは、「上期は順調に推移した」と述べた。通期の予想は修正しない。
富士通
磯部武司 副社長CFO
好業績をけん引したのは、主力のサービスソリューション事業。売上収益は4.8%増の1兆665億円、前年度の事業再編などの影響を除く実質ベースでは6.4%増となる。調整後営業利益は309億円増の1196億円で、利益率は11.2%と前年から2.5ポイント上積みした。国内ビジネスは、DXやモダナイゼーションに対する需要の継続的な拡大により、8.9%の増収。利益面では、開発プロセスの標準化・自動化などによる採算性改善によって、調整後営業利益ベースで212億円のプラス効果となった。
同セグメントで成長戦略の柱に位置付けられている、オファリングを中核とする事業モデル「Fujitsu Uvance」は、売上収益が55%増の3110億円だった。内訳としては、ITインフラや業務アプリケーションなどのテクノロジー基盤で構成される「Horizontal」が37%増の1883億円、社会課題の解決に主眼を置くクロスインダストリー4分野の「Vertical」が94%増の1226億円と大きく伸長した。同セグメントに占める売上構成比は、前年の20%から29%に拡大。磯部副社長は、年間売上目標7000億円に向けて「順調なラインに乗っている」との見方を示した。
モダナイゼーション事業の受注高は3%増の1541億円となった。磯部副社長は、「パブリック系の大型商談獲得があった昨年の反動で伸長は弱く見えるが、実態は昨年の高い水準をさらに上回る商談の獲得ができている」と説明。計画通りに拡大しているという。
このほかのセグメントでは、ハードウェアソリューションの売上収益が7%減の4248億円、調整後営業利益が94億円増の125億円だった。アジアで小規模・低採算事業を縮小したことで減収となったが、24年に立ち上げたエフサステクノロジーズの製販一体体制による事業効率向上が効果を上げており、増益となった。ユビキタスソリューションの売上収益は4.2%増の1131億円、調整後営業利益は103億円増の217億円、調整後営業利益率は8.7ポイント増の19.2%。「Windows 10」のサポート終了に伴うPC切り替え需要の継続が主な要因となる。
現行の中期計画が最終年度を迎えるにあたって、磯部副社長は、「サービスソリューションを中心とした連結全体の利益拡大と、採算性の改善に引き続き取り組み、中期経営計画の達成はもちろん、その先の持続的な企業価値向上につなげていく」と展望した。
また、Uvanceの主力領域の一つであるData&AI領域の強化に向け、データサイエンスやデジタルマーケティング領域に強みを持つブレインパッドと経営統合契約を結んだと発表した。公開買付け(TOB)により完全子会社化する。統合により、国内Data&AI市場におけるリーダーポジションの迅速な確保を目指す。
NEC
案件減でも利益倍増 BluStellarが貢献
NECの売上収益は5.6%増の1兆5697億円、調整後営業利益は115.6%増の1315億円と増収増益だった。ITサービスと航空宇宙防衛事業(ANS)が好調で、社内想定の調整後営業利益を約200億円上回った。
国内ITサービスについて、売上収益は3.4%増の9540億円で、好調なパブリック領域がけん引した。法人向けPCの販売機能移管や子会社事業の一部終息などの特殊要因を除くと約9%の増収となる。調整後営業利益は520億円増の1009億円。統合基盤を活用したDX事業「BluStellar」の売上収益が19.8%増の2880億円、調整後営業利益は261億円増の396億円と、伸長に大きく貢献している。国内ITサービス全体の売り上げに対してBluStellarが占める割合は30%に達した。前年同期は26%だったが、想定以上のペースで事業拡大と収益性向上を実現したとしている。
NEC
森田隆之 社長兼CEO
売上収益に対する調整後営業利益の割合は10.6%と、5.3ポイント上がった。森田隆之・社長兼CEOは、構造改革によるコスト剥落や事業売却を除いたオーガニックな収益性改善が向上幅の大部分を占めており、「データドリブン経営をかなり進めたこと、BluStellarというかたちで取り組んだことの効果が出ている」と強調した。
受注動向は国内ITサービスが5%減った。案件の端境期であることや、受注獲得が下期に偏重していることを理由に挙げた。DX需要が堅調なことから、下期には増加に転じる見込みだとした。エンタープライズは11%の減少で、内訳は製造が1%増、金融が3%減、流通・サービスが21%減となった。パブリック領域は1%減で、自治体システムの標準化や消防防災案件が一巡した一方、官公庁大型案件を獲得して前年並みに落ち着いた。子会社他も5%減ったが、法人向けPCの販売機能移管の影響を除くと前年並みだという。アビームコンサルティングは13%増え、受注ベースで二桁成長を続けている。
好調な国内ITサービスを背景に、25年度通期の予想を上方修正し、パブリックを中心に増加を織り込んだ。売上収益は当初見込みから600億円増の3兆4200億円、調整後営業利益は200億円増の3300億円を見込む。
現行の中期計画は最終年度を迎えている。シナリオに基づいたコンサルティング起点のビジネスを核とする高利益なモデルへの転換に伸びしろを見出しており、次の中計に向けても引き続き高水準の利益改善を目指す。
10月29日の決算発表に合わせ、通信事業者向けソフトウェア事業の米CSG Systems International(シーエスジーシステムズインターナショナル、CSG)を、北米地域統括会社を通じて28億8700万ドル(約4417億円)で買収し、完全子会社化すると発表した。CSGは、テレコム・ブロードバンド事業者向けのBSS(ビジネスサポートシステム)ソフトウェア大手。欧州でのDGDF(デジタルガバメント/デジタルファイナンス)領域のように、NECはグローバル市場において、特定領域でのトップシェアを獲得していく方針を鮮明にしている。
日立製作所
国内IT事業が好調 AIエコシステムの拡大に注力
日立製作所が手掛ける事業のうち、IT関連セグメントであるデジタルシステム&サービス(DSS)の売上収益は、前年同期比1.1%増の1兆3262億円、調整後営業利益に一部の償却費を足し戻すなどしたAdjusted EBITAは、4.3%増の1763億円となった。海外ストレージ事業は欧米顧客の投資抑制により減収だった一方、国内IT事業が好調で、幅広い業種でDX需要を取り込み増収増益だった。
日立製作所
加藤知巳 専務CFO
DSSのうちフロントビジネスは、紙幣の改刷に伴うATM事業の反動減は解消し、金融、電力、公共など全分野で好調に推移した。ITサービスは、クラウドやセキュリティー関連でLumada事業が拡大した。加藤知巳・執行役専務CFOは「国内DXとモダナイゼーション案件が堅調だった」と説明した。ストレージ事業は欧米での投資抑制が継続しているものの、案件管理の徹底によるコスト削減で収益性は回復しているとした。また、米子会社のGlobalLogic(グローバルロジック)は、前年同期比で成長を継続した。他セクターとのシナジーを生む協働案件やAIサービス展開を加速したことに加え、AI事業の強化に向け独synvert(シンバート)を買収し、エージェントAIやフィジカルAIの強化で「HMAX」の展開を強化する。
Lumada事業は、売上収益が47%増の1兆550億円と大きく伸長した。同事業におけるIT関連セグメントのデジタルシステム&サービスの売上収益は前年比44%増で、62%を占めた。Lumada事業のさらなる拡大に向けた施策として、AIエコシステムを拡大するためのパートナーとの連携を強化すると説明した。玉井信一郎・インベスター・リレーションズ本部長は、10月に米OpenAI(オープンエーアイ)とグローバルAIデータセンター(DC)を軸とした戦略的パートナーシップを締結したことに触れ、▽AIの普及に向けて必要な電力の供給▽DCの冷却やストレージ技術を活用してインフラ構築を加速▽最先端技術を使いこなし顧客への価値提供のレベルを向上―の3点において協業すると解説。「中長期的な成長機会として期待できる」と展望した。Lumada事業の通期での売上収益見通しについては、32%増の4兆円と設定し、全社事業における比率を39%とした。
全社の連結業績は、売上収益が5.3%増の4兆7874億円、調整後営業利益が25.5%増の5080億円、Adjusted EBITAが994億円増の5618億円、純利益が61.8%増の4728億円。全社連結の通期見通しを上方修正した。売上収益は前回の10兆1000億円から10兆3000億円に、Adjusted EBITAも1000億円上積みし1兆2100億円、純利益は400億円増の7500億円を見込む。デジタルシステム&サービスでは、海外顧客の投資抑制により売上収益を700億円下方修正したものの、コスト削減により引き続きAdjusted EBITAは計画を維持する。売上収益は4%増の2兆9500億円、Adjusted EBITAは429億円増の4370億円が目標とした。
米国の関税政策の影響については、当初の見通しよりリスクは縮小しているとして、Adjusted EBITAを通期見通しで前回比100億円増とした。加藤専務は「売価に転嫁している部分はお客様に丁寧に説明した上で理解していただいている」と述べた。