日本IBMの中堅市場戦略

<連載・日本IBMの中堅市場戦略>第3回 クラウド・業種戦略

2011/08/04 20:29

週刊BCN 2011年08月01日vol.1393掲載

 日本IBM(橋本孝之社長)が昨年打ち出した中堅・中小企業(SMB)と地域向け戦略は、クラウド中心のサービスを提供する新パートナーモデル「IBM サービス・オリエンテッド・パートナリング(IBM SOP)」と同時並行で推進してきた。しかし、地域では「ハードウェアやソフトウェアなどを組み合わせた従来のオンプレミス(企業内)システムが主流」と伊藤昇・広域事業部長は実情を語る。伊藤事業部長の分析によれば、「あと1、2年は、このビジネスが伸びる」とみられているようだ。同社は、重点領域である地方自治体、医療、文教、ネット系企業の4分野で、現行システムでの案件獲得の増加を目指す一方で、徐々にクラウドを地域に浸透させる策を練っている。

自治体、医療などを重点分野に

 日本IBMと協業関係にある、地域で活躍するパートナーは、昨年1月の組織改編以降、それほど数が増えていない。ただ、IBM製品の取引額は前年度同期に比べて大幅に成長した。伊藤事業部長は、「顧客に満足してもらうシステムを提供するには、パートナーにソリューションを深く理解してもらう必要がある。そのうえで顧客が求める製品を連携する」と見通しを話す。現在、同社の製品責任者が地域に出向いて、パートナーの要望や顧客からあがってくるご要望をお聞きして対応する活動を展開中だ。また、パートナーごとに実施する「出前セミナー」は半年ほどで100回を数えている。

 重点領域をみると、自治体向けで、ニーズが高まっているものがある。機密情報の二次漏えいを防止する「デジタル文書セキュリティー・クラウド・サービス」だ、東京基礎研究所で開発したソフト「SABLE」をベースにしたもので、自治体や文教向けのキラー・サービスになりつつある。こうした情報を提供しつつパートナー・ソリューションの付加価値を高めている。同社は地域のSMB向けクラウドで、地場データセンターに同社のIaaSを提供する新たな戦略を打ち出す計画だ。(谷畑良胤)


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