元請けSIer各社は、AIを活用して開発生産性を数十倍に高めると公言し、外部調達を減らそうとしている。社員は固定費、協力会社は変動費。需要が縮むとき、真っ先に圧縮されるのは変動費だ。これはある特定企業の方針ではなく、どの元請けでも同じことが起きる。
下請けの中小SIerにはジレンマがある。元請けはAI駆動開発を求め、応じられない会社は発注先から外れる。しかしAIの導入で工数が削減されれば、人月の売り上げは減る。元請けには、減った工数を価値で売り直す道があるが、工数で買われる下請けにその道はない。
「元請けがなんとかしてくれる」という期待は幻想だ。元請けもまた、人月を売る限り成長は見込めない。自らも人を減らし、事業を手放し、価値を売る体質への転換を迫られている。その転換は、下流への配慮なしに進む。元請けが自分を救うために動くとき、協力会社は守られる側ではなく、削られる側に置かれる。
多重下請けという構造そのものが、前提を失いつつある。これが必要だったのは、システムをつくるのに大量の人が必要だったからだ。少人数で何十人分の仕事ができるようになれば、人を集めるために層を重ねる理由は消える。開発需要そのものは増えるだろうが、増えた需要は、ユーザー企業の内製に吸収され、工数を売る層には回らない。残された時間は、厳しく見れば2~3年であろう。
これは現場の自助努力で乗り切れる問題ではない。AIを使いこなすほど人月の売り上げは減る。努力するほど会社が苦しくなる中で、現場に努力を求めるのは、矛盾を現場に押し付けることにほかならない。何を売り、誰に売り、何を止めるのかは経営にしか決められない。
道は三つある。縮小を前提に工数の供給者として残るか。業種や業務の知見を製品やサービスに変えて売るか。元請けを介さずユーザー企業の事業部門に直接向き合い、成果に責任を持つ伴走者になるか。どれを選ぶにせよ、移行期の売り上げ減と、稼働から人を外す痛みを、経営が引き受けなければならない。
発注が続いている間、変化は見えない。発注が減り始めたとき、投資の余力も時間も残っていない。まだ数字に表れていない変化を構造から読み取り、決断し、動く。それを始めるのは、今をおいてほかにない。
ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義

斎藤 昌義(さいとう まさひろ)
1958年生まれ。日本IBMで営業を担当した後、コンサルティングサービスのネットコマースを設立して代表取締役に就任。ユーザー企業には適切なITソリューションの選び方を提案し、ITベンダーには効果的な営業手法などをトレーニングするサービスを提供する