「NIMBY(ニンビー)」と呼ばれる反対運動を招く種類の施設がある。NIMBYとは“Not In My Back Yard(うちの裏庭にはお断り)”で、社会的には必要な施設だが、それが近くにつくられることは望まないという住民の主張を示す略語である。NIMBY施設の典型例としては、清掃工場や処分場、刑務所、発電用の風車や太陽光パネルなどがある。
今、それらNIMBY施設への仲間入りをしつつあるのが、データセンター(DC)だ。誰もが日常的に利用するスマートフォンやPCの向こう側には必ずDCがあり、人々の生活や仕事を支えているのだが、住民から見れば、巨大な建物なのに何をしている施設なのかわからない。冷却装置や電源設備から発生する騒音や排熱が、周辺環境に何らかの影響を与えるのではないかという懸念の声は尽きない。ただ、工場や物流センターなどに比べると、DCは静かで、車の出入りなども少ない。建物に加え、高価なサーバーが多数設置されるDCは固定資産としての評価額が高く、地元には税収という還元もある。
先日、新たなDCの建設が進む郊外の街を訪れた。DCの区画の近くには、事業者が合わせて開発したとみられる保育施設やスポーツジムなどが設けられ、地域に配慮を示そうとする姿勢は感じられた。それでも、窓のない巨大な壁面が視界を覆うと、DCは地域に突然現れた要塞のようにも見える。調べればどの事業者のものかある程度はわかるが、現地には看板もない。この「何者かわからない」匿名性こそが、DCに対するネガティブな感情の源かもしれない。「DC=公害源」のような決めつけは短絡的だと思うが、地域との対話がない状態で突然DC開発プロジェクトが明るみになれば、反発は避けられないだろう。
ITは社会にとってなくてはならないものであり、DCもまた社会インフラの一つである。DCは高いセキュリティーが求められるテナント向け施設という性質はあるが、外部からの侵入や攻撃に備えなければいけない事情は、発電所やガスタンク、上下水道施設などのインフラも同じだ。いつまでもただ匿名の存在では、地域からのNIMBY視は免れない。社会インフラとして存在感を増すのであれば、その価値や役割を説明する責任もまた大きくなる。
週刊BCN 編集長 日高 彰

日高 彰(ひだか あきら)
1979年生まれ。愛知県名古屋市出身。PC情報誌のWebサイトで編集者を務めた後、独立しフリーランス記者となり、IT、エレクトロニクス、通信などの領域で取材・執筆活動を行う。2015年にBCNへ入社し、「週刊BCN」記者、リテールメディア(現「BCN+R」)記者を務める。本紙副編集長を経て、25年1月から現職。