静岡情報産業協会(SIIA)は、静岡市を中心とした中部地域の情報産業の発展を目的に1990年から活動している。現在は、ITの担い手の創出を目的とした取り組みを中心として、静岡のIT市場の拡大に向けて尽力している。久保田光二・理事長は活動を通じて「静岡を明るく元気にしたい」と力を込める。(岩田晃久)
三つの活動でITの担い手を創出へ
――SIIAについて教えてください。
当協会は、静岡県中部の情報産業の発展を目的に活動しています。また、静岡県は広いので、東部の静岡県東部IT推進協議会や西部の浜松ソフト産業協会などと連携した取り組みも展開しています。
――どのような会員構成ですか。
現在の会員数は63で、企業以外にも学校などが会員となり、産学官連携を重視しています。産学官という面では、いろいろな考え方があり、単純に同じ方向を向くことは難しい面もありますが、その中でも一緒にやっていこうという機運は高まっており、大学や専門学校が精力的に活動に参加しています。
また、スタートアップや静岡に新たな拠点を構えた企業が会員になってくれるケースが出てきています。今後はそういった方々が協会の中心になっていくのを期待しています。
――活動内容について教えてください。
IT技術はものすごいスピードで発展しており、それを1社で追っていくのは難しいため、会員が一緒に学ぶ機会が必要だと考えて、研修会を開催するなどしています。当協会の教育研修部会が主体となり、会員のニーズに沿った内容で研修を行っています。
会員の交流機会をつくるのも重要な役割です。従来は会員同士を紹介する機会が多かったのですが、最近は若い世代との交流の場を設けることに注力し、交流会や意見交換会などを開いています。他社との交流を通じて、さまざまな情報を得られますし、自分たちの立ち位置も分かるので、交流する場をつくるのはとても大事なことだと思っています。
多くの地域と同じように静岡県も人材流出の課題を抱えているため、人材開拓にも力を入れています。学校との交流を通じて、静岡県にいてもITに従事し地域に貢献できると理解していただき、県内で働きたいと思ってもらえるようにしたいですね。ITの担い手を切り開いていくには、研修、交流、人材開拓の三つの活動が重要です。SIIAが中心となりみんなで力を合わせて取り組んでいます。
――外部と連携して取り組んでいることはありますか。
いくつかの情報産業協会との連携に取り組んでいますが、その中でも神奈川県情報サービス産業協会(神情協)との関係が深まっています。神情協では、多くのオンライン講座を展開されているので、それをSIIAの会員に提供したり、広報活動を協力し合うなどしています。
久保田光二・理事長
会員と共に課題解決目指す
――地域のITベンダーのビジネス環境をどのように捉えていますか。
悪い話はあまり聞かないので景況感は良いのではないかと思っています。「2025年の崖」の影響もあり、公共での標準化、民間企業のレガシーシステムのモダナイズといった案件が豊富です。エンドユーザーにおいても、これまで使ってきたシステムが使えなくなる、労働人口の減少で事業をどのように回していくべきなのかといった危機感を持ち変革することに関心が高まっています。
――労働人口の減少の課題解決としては、AIをはじめとした最新技術の活用が重要になります。ユーザーでの利用は拡大しているのでしょうか。
AIなどを利用する企業は増えていますが、業務の中に組み込んで成果を上げているというケースは少ないと思います。必要性は分かっているが、(先進技術の活用を)担う人材を配置して、推進する、そういった機運が高まるのはこれからではないでしょうか。
――今後の展望をお願いします。
会員ごとに、求めるものや思いは異なるかもしれませんが、共通する課題はあるので、課題解決に向けて会員の皆様と引き続き取り組んでいきたいです。また、次の世代に気づきを与えられるような機会をつくるのも重要な役割だと思っています。活動を通じて、静岡をより明るく元気にしたいです。
<紹介>
【静岡情報産業協会】
1990年に任意団体として設立、2008年にNPO法人に。静岡県中部地域を中心に情報産業の発展を目指し、人材の創出支援や情報発信、交流機会の提供などを通じて会員を支援する。