名古屋市に本社を置くフリースタイルは、ゲーム開発事業で培ったノウハウをシステム開発に生かし、事業を拡大させている。青野豪淑・代表取締役は「従業員第一主義を実践する」と語り、社員による新規事業の創出を後押しする組織づくりをドライバーに、成長を目指す考えだ。
(取材・文/大畑直悠)
UI・UXに強み
――事業の概要は。
当社のIT技術者が顧客先に常駐してシステム開発や運用を支援するITソリューション事業が売り上げの7割ほどで、名古屋の企業を中心にビジネスを展開している。特に直近5年間は急速に成長できており、従業員を増やしている段階だ。3割はゲーム開発事業が担っており、「オバケイドロ」シリーズなどのヒット作を生み出せている。
――システム開発に関して顧客からのニーズの変化は感じるか。
多機能だからといって、もてはやされるわけではなくなってきている。例えば銀行のATMでもキャラクターが出てくるような時代だ。機能性の高さだけではなく、UI・UXがより重視されるようになった。その点、当社はゲーム開発で培ったノウハウがあり、大きな強みになっている。
ゲームの場合は、ユーザーがボタンを一つ押すごとに、面白いと感じてもらわなければならない。ゲーム開発ではデザインの工夫は当たり前になっているが、システム開発では普通になっていないと感じることは多々ある。ただシステムが動けばいいというのではなく、誰もが楽しく使え、説明書がなくても理解できる仕組みが、ホームページをはじめとしたあらゆる場合で求められており、デザイン設計の知見を買われて受注を増やしている。仮にシステムを導入しても、使い方を説明するセミナーを都度、開催しなければならないのなら、コストの削減になっていない。
青野豪淑 代表取締役
新事業を創出する
――今後の成長戦略を聞く。
受託開発を進めてきた一方で、自社の技術者が独自製品を開発して販売することでも十分に稼げるようになってきた。AIやIoTといった先端技術を活用した製品を開発するプロジェクトが現在も複数走っている。また、23年に東京、25年に大阪に拠点を開設した。事業を展開するエリアも拡大を目指したい。
成長戦略という意味で、最も力を入れているのは従業員の働きがいの追求だ。社員が強い意志を持ちつつ、仕事を楽しいと思えていると、良い製品は生まれてくる。そのため、「こういう製品をつくれ」という指示はしておらず、自発的な挑戦を後押しすることを最も重視している。はっきり言うと、経営者としては、その後押しの部分だけに力を注いでいる。
新規事業の8割はビジネスとして外れるが、2割ぐらいは成功し、失敗分をカバーしてくれる。社員の挑戦に対してしっかりと予算を充てて裁量を与え、定例的な会議で投資を継続するか判断するプロセスを繰り返している。ゲーム事業もその中で生まれ、結果的に強みになった。
挑戦する環境を整える
――従業員エンゲージメントの向上にはどのように取り組んでいるか。
当社ではプログラミング未経験者でも採用して社内で育成する体制を整えており、やる気を引き出すための仕組みづくりには特に力を入れている。また、現場で経験を積んでもらいながら、一定の技術が身についた従業員には、やりたいことに挑める環境を用意している。技術者の成長には、次に目指すべき環境が用意されていることが重要だ。
社員からは「新しいゲームをつくりたい」「海外事業をやってみたい」という多くの声があるが、この会社でそれに挑めると思ってもらえれば、従業員が笑顔で仕事し、顧客にもいい仕事が届く。現在はその連鎖がかたちになったことで、会社の成長を後押ししていると実感する。
――今後の展望を。
ゲーム開発で有名になった側面があるが、本質的にはITの会社でいたいという思いが強い。人々の生活を助けて便利にするという点で、ITは素晴らしい。新製品の開発はうまくいくこともあるが、失敗することのほうが多い。それでも、システム開発の会社であり続けることに価値があると考えている。
従業員にはITソリューション事業を通してスキルを習得したり、さまざまな職場を経験したりして成長していってほしい。そして身に付けた知見をもとに自分がつくりたいと思える製品の開発に進んで成功できれば、後輩たちにも新しい仕事に挑む勇気を与えるだろう。ITを根幹としつつ、従業員が練って創出した商材で事業の多角化を目指す。
ただ、ITビジネス以前に、従業員の幸せが第一の優先事項だということはぶれない。従業員第一主義を実践し、「フリースタイル」という社名で掲げている通り、それぞれの社員の自発的で楽しいと思える挑戦を後押しする。
Company Information
2006年に設立。ITソリューション事業や、ゲーム開発事業を展開する。名古屋本社のほか、東京都千代田区や大阪市にオフィスを置く。契約・派遣社員、フリーランスを含む従業員数は200人を超える。