大阪市のエスエヌシーは情報機器のライフサイクル管理(LCM)で業績を伸ばしている。リユースPCの調達が強みで、「Windows 10」のリプレースや、新品PCの値上がりによる需要を取り込んでいる。創業メンバーで2代目の中近芳樹社長は、企業の情報システム業務を請け負うことで、「従来の作業中心のLCMから、AIなどでサービス内容を高度化する技術型の『情シスBPO』に発展させる」と打ち出す。
(取材・文/春菜孝明)
定型業務をアウトソーシング
――事業の紹介を。
企業向けにはPCやワークステーション、タブレット、周辺機器、ソフトウェアの販売とレンタルから、設定、運用、回収まで担っている。PCは企業から引き取ったり、リース会社から仕入れたリユース品の割合が高い。
リユース品の販売はコスト削減の手段として中小企業の案件が多かったが、大手企業でも取り入れられている。用途に応じて最適なスペックを選定するという考え方が浸透してきたからだ。例えば設計や開発用途は高スペックで、コールセンターではブラウザー上のアプリが動くような必要十分なPCがほしいという使い分けだ。当社は新品も販売しており、リユース品とハイブリッドで提案できる強みを生かせている。
――注力している点は。
PCメーカーやリース会社もLCMに取り組む中で差別化しなければならないが、当社は創業時から企業向けのヘルプデスク業務を受託してきた。そのノウハウがサポートサービスの基盤になっており、圧倒的なサービス品質とホスピタリティーによる顧客の定着を実現している。
また、作業集約型からITを用いた仕組みへの転換を図っている。ヘルプデスクでは、従来は電話やメールで寄せられる問い合わせについて、原因の切り分けを全て人手が担っていた。しかしナレッジをAIに学習させることで、一次受付はAIが処理できるようになる。実機の故障や運送、交換など人間が対応する領域は出てくる。そこでも傾向分析などが可能だ。こうした、企業の情報システム部門の課題を解決する「情シスBPO」に変化させている。
――企業が抱えている課題は何か。
中小企業では数人の担当者がデバイス運用や周辺業務に追われている。セキュリティー課題への対応やAIの導入、DXの進展を誰も担えない状態になってしまう。こうしたユーザーの課題に寄り添うには、定型業務をアウトソーシングする必要がある。
EOS後も案件増加
――業績はどうか。
2024年度は全体で30億円の売り上げがあり、25年度は40億円まで伸びた。26年8月期は50億円近くに増加すると見込んでいる。25年10月のWindows 10のサポート終了(EOS)以降もリプレースの案件は思った以上に存在する。さらに半導体やメモリーの高騰が新品PC価格を押し上げており、リユース品の需要は増加している。
中近芳樹 代表取締役社長
ハードウェアとサービスの売り上げは、ほぼ半々になっている。物販は個人向けと法人向け、業者間の卸売りがある。病院に電子カルテを販売している会社や、家電量販店の法人営業部門が仕入れるなど、需要は多様だ。グループ内に対してレンタルも行っている。
――SHIFTのグループ会社としての相乗効果は。
共同でビジネスする機会が増えている。顧客企業で一時的に情報システム担当の人手が不足する場合はSHIFTが人材を補完し、物理作業のスペースは当社のLCMセンターで引き受けるといった役割分担が可能になった。
LCMには当社とSHIFTが無償提供する機器管理システムの「キキログ」やSaaS管理システム「ワスレナイ」、資産管理システム「ナクサナイ」を組み合わせることで、ソフトウェアとハードウェアの両面を一体で管理できる点も大きな強みだ。入退社に伴うライセンス管理や未使用SaaSの可視化、PCやリース資産の棚卸しといった業務を無料のツールで支援することで顧客との接点を創出し、そこで得られたデータを基にBPOやLCMサービスへと展開している。
東京にLCMセンター
――トップとして取り組んでいることは。
人への投資を増やしている。手薄だった経理や人事総務などのバックオフィス人員を増員した。社員の入社後の教育やメンタルケアにも注力している。最小限のリソースで最大の利益を上げるとの考え方を持っているが、会社の成長に目を向けると、投資することで規模を大きくすることが適切だ。SHIFTグループに入ったことで採用力が付き、給与などの制度設計も進んだ。
――今後の展開を。
無償SaaSなどを切り口として「デバイス+BPaaS(Business Process as a Service)」のサービス提供を強化する。25年12月に東京テクニカルセンターを開設した。グループ企業やリース会社、レンタル会社との連携を通じて市場規模の大きい首都圏ビジネスの獲得を図りたい。生成AIをフル活用した次世代LCMサービスを推し進めるとともに、営業効率の向上や経営数値の見える化や詳細な分析にもAIを使い、商品と販売戦略をより精緻なものとしていく。
Company Information
1997年設立。PCなどIT機器の調達やキッティング、運用、廃棄を代行するライフサイクル管理(LCM)を手掛ける。2020年にSHIFTに株式を譲渡し子会社となった。