〈企業概要〉
米Grafana Labs(グラファナラボ)は2014年設立。オブザーバビリティーツールの「Grafana」をオープンソースモデルで開発すると共に、その商用版クラウドサービスとして「Grafana Cloud」を展開。グローバルでOSS版のユーザーは25万以上、商用版は7000社が利用している。日本法人は25年11月設立。
ITシステムが複雑化する中、システム全体を統合的に可視化するオブザーバビリティーへのニーズが高まっている。米Grafana Labs(グラファナラボ)は、オープンソース(OSS)版で拡大した利用者に商用版へ移行してもらうため、コストマネジメントと利便性を両立できる点を訴求している。国内での拡販にあたりパートナーによる市場開拓を図っていく考えだ。
(取材・文/堀 茜)
業界コスト最適化の起爆剤に
グラファナラボは、オブザーバビリティーベンダーとしては新興だが、テレメトリデータを単一の統一形式で収集、処理、エクスポートするためOSSのオブザーバビリティーフレームワーク「OpenTelemetry」を採用し、ベンダーロックインを避けられる点を強みとしている。
加賀美正篤
副社長執行役員 GTMカントリーリーダー
「Grafana Cloud」は最新機能がいち早く実装される機能面に加えて、最大の優位性として打ち出しているのが、コストマネジメントにフォーカスしている点だ。同社はデータの保有量ではなく使用量に応じて課金する独自モデルを採用し、導入企業がROI(投資対効果)を出しやすいライセンス形態を取っている。
一般的なオブザーバビリティークラウドサービスでは、送信されたテレメトリデータの量に基づく従量課金となっているが、Grafana Cloudは、テレメトリデータの中で価値の高いもの、使用頻度の高いものだけをAIで自動選別する「Adaptive Telemetry」を搭載する。重要度の低いデータは集約・サンプリングなどを適用することで容量を縮減し、コストと価値を最適化する。
日本法人のグラファナラボ日本でGTMカントリーリーダーを務める加賀美正篤・副社長執行役員は、「日本企業の多くが、オブザーバビリティー製品にかけるコストが上がり続けていることに悩んでいる」と解説する。Grafana Cloudは、他社製品と比較して年間費用を半分程度に抑えられるケースもあり、企業によって年間数億円規模のコスト削減につながっている事例もあると説明。価格優位性があるだけでなく、データ量を絞ることで検索のスピードが上がり、モデリングもしやすくなるため、利用促進につながるのもメリットだという。加賀美副社長は「当社が相対的に業界全体のコストを最適化していく起爆剤になる」と価値を強調。「最新機能でできることは増えコストは下がるため、興味を持っていただいている企業はとても多い」とシェア拡大への手応えを語る。
主にフォーカスする業界は、製造、金融、通信を挙げる。日本は業界ごとにさまざまな規制があるケースも少なくないが、同社はプライベートクラウド内での構築にも対応するなど柔軟で幅広い形態での提供が可能なため、規制が強い業界ほど引き合いが高まるとみる。データを国内に置きたいという日本企業のニーズに対応するため、日本法人の設立に先駆けて、2024年からAmazon Web Services(AWS)東京リージョンからのサービス提供も開始している。
直販と間接販売の両輪に注力
販売は、直販と間接販売の両輪に注力する考えだ。21年にサイオステクノロジーと国内初の販売代理店契約を締結しており、SIerやコンサルティング企業など数社とパートナー契約の協議を進めている。加賀美副社長は「当社とパートナー双方の価値を高められる会社と組みたい」と展望。単純なリセールではなく、上流工程も含めて全体をカバーできるパートナーを開拓していきたいとする。直販が9割を占めるが、首都圏に集中している顧客を全国に広げていきたい考えで「パートナーには、当社ではリーチできない地方を含めたラストワンマイルに届ける役割を期待したい」(加賀美副社長)。パートナーがGrafana Cloudを取り扱うメリットは、顧客に導入することで、エンドユーザーのシステム全体を把握できるようになり、他領域でも最適な提案ができるようになる点だとする。
Grafana Cloudは、PoCの実施にあたって期間や機能の制限がないフリーライセンスを提供している。また、他社製品から乗り換える場合には、移行を自動化するツールがあり、80%の作業の自動化が可能になっているという。
同社は、顧客やパートナーが最新テクノロジーに触れる場として、26年前半に都内にエグゼクティブブリーフィングセンターを開設し、ハンズオンセッションやセミナーを開催する予定だ。加賀美副社長は「Grafana Cloudで顧客の事業成長を後押ししたい」と意気込んでいる。