札幌市に本社を置くアジェンダは、旅行業の業務フローに合わせた基幹システムを提供し、中堅・中小の旅行会社の業務効率化やシステム刷新を支援している。長年続いているソースネクストとの連携も事業の柱で、開発力を磨く土台になっている。伊藤智裕社長は、旅行業向けの強みを伸ばしながら、自社製品の新規育成を目指す方針を打ち出す。
(取材・文/春菜孝明)
「Fit to Standard」で半年以上伴走
――会社の紹介を。
1990年に創業し、ソフトウェアの受託開発を手掛けてきた。現在、旅行会社向けシステム開発、BtoC向けアプリケーション開発、印刷業向けECサイト構築の三つの事業を展開している。
伊藤智裕 代表取締役社長
旅行会社向けシステムは30年以上の開発実績がある。当初は旅行会社の社内システムを受託開発していたが、顧客との関係が深まる中で、旅行会社と共同事業で航空券予約システムをつくったことが事業拡大につながった。海外旅行・出張といったアウトバウンド領域の手配業務に強みを持っている。
主力製品はクラウド型の基幹システム「マタタビ Suite」だ。旅行代理店にとって、海外旅行の手配は国内旅行より煩雑になる。全世界の航空券から価格や移動時間などの条件に合う便を選び、高額な航空券は顧客から前金を預かり、為替ルートの変動によって差額の精算処理も発生する。マタタビ Suiteでは、こうした業務を織り込んでおり、スムーズに担える。
主な顧客層は首都圏を中心に300人以下の旅行会社で、システムの老朽化が進んでいる。細かい手配に伴って多くの作業が属人化したり、コロナ禍で企業規模を小さくしたため人手が足りなかったりといった問題もある。
競合するオンプレミスベースのパッケージに対し、当社はSaaSで提供し、システム構築の効率化やセキュリティーの面で差別化している。また、購入を決めていただいた後は、半年から8カ月ほどかけて導入サービスを提供している。「Fit to Standard」の考え方に基づいて業務変革を支援している。
――ほかの事業の概要は。
BtoC向けアプリケーションでは年賀状・はがき作成ソフトの「宛名職人」を開発。製品の権利はソースネクストに譲渡したが、自社での開発を継続している。同社との協力はほかにも、AI通訳機「ポケトーク」のサーバーの開発や構築運用などがある。社内にはソースネクストと子会社のポケトークの製品を開発する「アジェンダラボ」というチームを設けており、企画の初期段階から協力する体制を敷いている。
印刷業向けには、オーダーメイド商品の受注に対応するECショップ構築システム「ジグミー」を提供している。名刺や封筒、挨拶状、ノベルティーなどについて、購入者がWeb上で印刷内容を入力すると、完成イメージを確認して注文できるようになっている。
研究開発に注力
――今後注力したいことは。
旅行業は回復傾向にあり、引き続き強みを生かしたい。現在は基幹システムだけだが、周辺のシステム開発を新たなサービスとして考えている。
また、自社製品やサービスを育てようと研究開発にも取り組んでいる。例えばフィットネスクラブ向けに退会予測AIを開発した。約1万人の会員データから来館頻度や滞在時間などを分析し、退会の可能性が高い会員を予測することで、店舗側の早期対応や会員数の維持につなげる仕組みだ。これは顧客からの要望ではなく、社員のアイデアを起点に取り組んだ。こうした事業には継続して投資する一方、社員が既存事業と兼務しており、事業化に進めるかが課題となっている。
――生成AIに関する取り組みは進んでいるか。
製品へのAI機能の組み込みは、あまり実績がないのが現状だ。ただ開発業務への採用は進んでいる。利用ツールは統一せずに事業グループごとに選んでいる。開発効率が上がる一方、人月単価の考え方をどうするかは依然として課題だ。新人もAIを使って開発しているが、上司が付き添いながら指導している。
――人材の定着に向けて工夫していることは。
働く空間は重要だと思っている。2021年に移転した新オフィスは、若手社員にプロデュースを任せ、エリアごとに色を変え、社内を移動するだけでも旅行しているように感じる場所になっている。
中途採用は苦労しているが、新卒採用では札幌という立地を生かし、地元の大学を中心に活動を強化しており、毎年数人を採用できている。利便性や社内の雰囲気に加え、転勤せず札幌で働き続けられる点も評価されている。本州の大学に進学した後、北海道に戻って就職したいと考える学生からの応募もある。
Company Information
1990年設立。本社は札幌市。旅行会社向けの基幹システムの開発や、印刷業向けのECサイト(自動組版Web受注システム)の構築を行う。ソースネクスト製品の受託開発も担っている。従業員数は約80人。