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応研 中堅・大企業向けERPにイノベーションを起こす新製品 『大臣エンタープライズ』を投入

2013/05/23 19:55

週刊BCN 2013年05月20日vol.1481掲載

 業務ソフトウェアベンダー大手の応研は、年商50億円以上の中堅・大企業向けとなる最上位製品の基幹業務システム『大臣エンタープライズ(会計/販売管理)』を6月に発売する。開発工数を大幅に削減でき、しかも高速・大容量で強固なセキュリティを実現した製品だ。企業規模が大きくなるほど、伝票・帳票機能など個別仕様に応じてスクラッチ開発するケースが多く、手間がかかる。だが『大臣エンタープライズ』は個別企業用のカスタマイズが容易で、開発工数の削減による納期短縮を実現、SIer向けにイノベーションを起こす。また、同社は6月から順次、全国でパートナー向け商談会・発表会を開催する。

トップが語る新製品戦略
――代表取締役社長 原田 明治 氏

●SIerの開発工数を削減
イノベーションを起こす新製品


 応研の基幹業務システム『大臣NXシリーズ』は、中堅・中小企業(SMB)向けの要件に応じて開発されたパッケージソフトだ。同社の営業エリア拡大に伴う導入規模の大型化に対応して、2008年にはカスタマイズ性・連携性を拡張した本格的なERP(統合基幹業務システム)製品『大臣ERPシリーズ』を発売。上位層への浸透を図って、中堅企業向け製品として定着しているが、同社はさらに規模の大きな企業へ参入する必要があると判断、中堅・大企業向け製品の開発を続けてきた。

 原田社長は、「年商50億~300億円規模の企業では、伝票や帳票機能を中心に、スクラッチ開発が多く発生している。この煩雑な部分のイノベーション(革新)のため、従来のパッケージ製品とは全く異なる製品コンセプトが求められた」と捉えて、今回発売する『大臣エンタープライズ』では、設計思想自体を根本的に見直したという。

 SMBの場合、パッケージソフトの仕様に合わせて財務管理の運用を行わざるを得ないケースが多い。一方、中堅・大企業では、業種・業態に応じた独自の運用に従って、パッケージをカスタマイズする傾向が強くなるほか、高度なセキュリティや内部統制を担保する必要性が生じる。

 また、一旦作り込まれた基幹業務システムは、法改正や企業統合などの様々な変化への対応が困難で、既存資産を継承できずに多くが残っているとみられる。同製品でそれらの分野にイノベーションを起こすとしている。

●販売パートナーとの連携を強化

 同社では、基幹業務ソフトが置かれているこうした事情について長年にわたって研究を重ねてきた。『大臣エンタープライズ』では、開発工数を大幅に削減し、高速・大容量に処理を行い、強固なセキュリティを担保する。そのうえで顧客側ではシステム投資を抑えられ、さらにSIer、販売パートナーは短納期で開発できるという、双方にメリットのある製品を満を持して投入する。

 原田社長は次のように語る。「『大臣エンタープライズ』における最大のイノベーションは“開発工数の削減”だ。従来とは全く異なるアプローチで設計、極限までスクラッチ開発を減らし、アプリケーション内で簡単に手を加えられる製品を生み出すことができた。中堅・大企業で求められる大容量データへの対応と高速な処理だけでなく、タイムラグのない画面表示などのユーザーにとって重要なレスポンス面の向上にも徹底的にこだわった。業務ソフト業界をけん引する製品だ」。

 同社では『大臣エンタープライズ』を、中堅・大企業内データの受け皿としての役割を担うと位置づけ、同市場向けの製品や専門分野を得意とする販売パートナーとの連携を強化する考えだ。この6月から順次、全国で商談会・発表会を行う。『大臣エンタープライズ』の付加価値を高めることのできるパートナーを募る方針だ。

開発責任者が語る製品の特徴
――取締役開発部長 上野 眞宏 氏

●プラグインで容易にカスタマイズ

 当初発売される『大臣エンタープライズ』は、会計と販売管理の2製品。「中堅・大企業に入っているセミオーダーのパッケージソフト群にイノベーションを起こす」と、開発責任者の上野眞宏・取締役開発部長が説明する通り、最大の特長は、SIerおよび販売パートナーが苦心していたカスタマイズ面の負担を大きく削減することに成功した点だ。

 中堅・大企業で多く発生する個別案件開発の対応力を高めるため、同社で「汎用項目」と呼ぶ機能を用意した。この汎用項目は、事業別収益管理や担当者別売上管理など、個別のユーザーの要求を満たすために自由に使用できる。『大臣エンタープライズ』の場合、業務システム開発で最も複雑で負担を強いられる入力系統の画面開発では、GUIベースで項目設計・画面設計・帳票設計が行える。従来であれば、「カスタマイズが避けて通れない開発部分」(上野取締役)がアプリケーション内で容易に実現できるのだ。

 『大臣エンタープライズ』では、伝票項目の科目・部門・金額・摘要などのほか、追加した汎用項目を含め項目表示位置や入力順指定など、個別企業の運用に応じて簡単に作成できる。会計業務では、この汎用項目を管理会計で要求される各種帳票作成にも応用できる。

 また販売管理では、例えば従来なら伝票入力画面ごとスクラッチ開発することになるような「得意先の過去の売上高・取扱高の変動に応じて商品単価を変更している」といったケースでも、標準の伝票入力形式をそのまま利用し、必要な機能だけを販売パートナーが開発すれば解決できる。同製品が採用しているプラグイン構造では、独自開発した部分だけを差し込んだり、差し替えることが簡単に行えるからだ。

 伝票入力だけでなく、帳票の個別開発でも、このプラグイン機能を活用できる。最もカスタマイズに時間を要する工数を大幅に削減し、高品質なシステムを提供できるという。


●処理速度面でもイノベーションを起こした

 『大臣エンタープライズ』では、カスタマイズ面だけでなく、中堅・大企業で求められる高いパフォーマンスを実現している。その一つとして、大量の伝票処理が不可欠となる規模の企業向けに高速・大容量化を図っている。

 上野取締役は「従来製品に比べて、ひと桁、ふた桁の容量が増えても処理遅延を起こさないレベルに高めた」と話す。会計製品では、100万明細の試算表集計を5秒以内に処理するほか、使用頻度の高い元帳と仕訳日記帳では瞬時に画面が表示されるよう待ち時間をなくしたという。

 販売管理製品でみると、「当社で行ったベンチマークでは、伝票259万行のなかから53万行がヒットする集計の場合、既存製品『販売大臣NX』の10分を『大臣エンタープライズ』では1分半に短縮できる」(上野取締役)と、大量データの高速処理を実現している。

 これに加えて中堅・大企業の場合、内部統制関連の機能が求められるが、『大臣エンタープライズ』では、グループ管理やログ管理などの制御機能を搭載した。

 会計製品では、例えば伝票やマスターの修正・削除に対して詳細な履歴を照会できる。既存の会計システム『大蔵大臣NX』にも、ログ管理機能は搭載されているが、伝票番号別に変更されたことが把握できるにとどまっていた。『大臣エンタープライズ』では、伝票の内容に関しても、誰がいつどの内容を変更したかが詳細にわかる。1998年7月に施行された「電子帳簿保存法」の要件を満たすことが可能だ。

 開発工数を大幅に削減し、高速・大容量で、強固なセキュリティ環境を備えた『大臣エンタープライズ』は、『SQL Server エンタープライズ エディション』や最新サーバーの性能を徹底して生かせることができるようになった。

 競合製品がひしめく中堅・大企業市場で、同社の『大臣エンタープライズ』は、大きな台風の目になりそうだ。



営業責任者が語る販売戦略
――取締役営業部長 岸川 剛 氏

●より上位層を攻めるための支援強化

 応研既存の基幹業務システムである『大臣NXシリーズ』や『大臣ERPシリーズ』が、『大臣エンタープライズ』のターゲットである年商50億円以上の企業に導入されているケースは、全体の10%程度だという。同社の得意分野である建設業に関しては、年商100億円前後の企業が大半となる。他に大企業の子会社やグループ会社に導入されるケースが増加しており、親会社でみれば年商数百億~数千億円クラス企業の関連会社にも導入されている。販売責任者の岸川剛・取締役営業部長によれば、今回の『大臣エンタープライズ』で狙う中核市場は、年商50億~300億円の領域に定めている。

 岸川取締役は「当社の販売パートナーからは、より上位層に販売を広げたいとの要望を受けていた」という。多くの大企業では、本社に大規模なERPを導入し、子会社やグループ会社などにコストを抑制できる応研製品を含めたSMB向け製品を利用している。しかし子会社とはいえ、単体の年商ベースでは数十億円に達するほか、本社のグループ会計に準じて、高機能な会計システムが必要になる。ただ、こうした企業は予算余力がなく、開発人員も限られている。この領域に適合する製品は少ない。岸川取締役は「『大臣エンタープライズ』は、プラグイン構造の採用という観点で、上位層の業務システムとの連携性に優位性を持つ」との考えだ。

 「SIer、販売パートナーにとって、カスタマイズが容易で納期短縮を実現できる『大臣エンタープライズ』は、SE(システム・エンジニア)の教育負担が少なく、案件回転率を向上させ、利益を最大化できる。当社が目指す領域に対し、短納期で対応できる競合製品は見当たらない」(岸川取締役)と自信のほどを示す。

 ただし、全国の販売パートナーの多くは、中堅・大企業を専門に攻略しようとしているわけではない。そのため応研では、従来の『大臣NXシリーズ』『大臣ERPシリーズ』で展開している戦略と同様に、業種・業態に応じた得意分野をもつ販売パートナーや、特化分野に強い製品をもつISVとの連携をさらに強化する。岸川取締役は「すでに一部の販売パートナーに対し『大臣エンタープライズ』をデモンストレーションしているが、拡張性や連携性などの設計思想を高く評価され、協業への参画を表明しているITベンダーが数社ある」という。

全国縦断のパートナーイベント開催へ

 応研では6月から順次、全国で『大臣エンタープライズ』の商談会・発表会を開催し、具体的な協業方法を組み立てて、14年3月期末の商戦期に向け、販売体制を整備していく方針だ。

 応研東京本社営業部の貞平康介氏は「現段階で、『大臣エンタープライズ』の販売を先行して取り組んでいるが、すでに導入を検討する企業がある。事前の評判は上々なので、早期導入を目指す」と語る。また、同営業部の末永徹氏は「革新的な製品、『大臣エンタープライズ』が持つメッセージをより広く、より深く、パートナー様にお伝えし、3年後には『中堅企業向けERP=応研』というポジションを目指す」と、意欲を示している。

 ERP研究推進フォーラムによれば、国内企業のERP導入率は34.8%、このうち、年商50億~300億円の中堅企業は、2013年にERPのリプレースか新規導入を検討しているそうだ。応研の『大臣エンタープライズ』は、製品自体の機能性の高さだけでなく、ビジネスタイミングを逃さず成長市場に投入された製品といえるだろう。

(写真左から)東京本社 東京第三グループ システム営業 リーダー 末永 徹 氏、
東京本社 東京第三グループ システム営業 主任 貞平 康介 氏

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応研=http://www.ohken.co.jp/