2018年IT業界のひ・ょ・っ・こ・り
実は以前からあるソリューションでも、ちょっとしたきっかけで大ブレークすることがある。働き方改革で導入が進んだモバイルソリューションや、人材不足という経営課題によって中小企業でグループウェアの導入が進むなど、ひょっこり感のあるソリューションが2018年には多く出てきた。デジタル化の波もあり、こうした傾向は今後も続きそうだ。ということで、本紙の特集記事から反響の大きかったものを「ひ・ょ・っ・こ・り」で振り返ってみよう。
「ひ」“ビ”ジネスアプリケーションで動くAIのリアル
『AIはどのように生まれ、活用されているか』
ここ数年来続いているAIブーム。ブームをけん引するIT業界に目を向けるとあらゆる製品やサービスの中でAI技術が組み込まれているが、傍からはどのようにAIが動いているのか分かりづらい。実際にAIは製品の中でどのように活用されているのか。自社サービスにAIを活用しているSaaSベンダーへの取材から、その姿をひも解いた。
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12月3日付Vol.1754掲載 )
「よ」“よ”みがえる仙台
『拡大するIoT/AIビジネス』
定期的に実施している地方特集。2018年は、仙台市、京都市、加賀市、徳島県での取り組みを取り上げた。
仙台特集では、地方創生と東日本大震災からの復旧・復興の取り組みを紹介。主要産業の漁業と水産加工業が、震災後の深刻な人手不足に悩まされており、自治体、大学、そして地元仙台市のITベンダーがこの難題解決に力を注いでいる。その実態を追った。
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7月30日付Vol.1737掲載 )
「っ」「“つ”ぎの成長戦略」を描き始めている
『「ポスト2020」、リセッションに備えよ』
2020年の東京五輪に向けた好景気が続いている一方で、「20年までに現行の設備投資は一区切りする」との見方もある。設備投資の一巡によるリセッション(景気後退、反動減)が仮に起きるとすれば、SIerも何らかの対策を打っておく必要がある。リセッションが起きるとすれば、どのようなものなのか、SIerの打つ対策とは──。「ポスト2020」に向けた動きを追った。
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1月15日付Vol.1710掲載 )
「こ」“こ”く産ベンダーに明るい未来はあるか
『2017年度決算でみえてきた各社の〇と×』
恒例の決算特集。2018年3月期の決算がほぼ出揃ったタイミングで、大手国産ベンダー各社の“通知表”をチェック。明るい未来がみえたベンダー、進路上に黄信号が灯ったベンダー。さまざまなバズワードの盛り上がりが一段落し、各社にとって新たな成長モデル構築の実行段階に移行できているかどうかが問われているとレポートした。
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5月21日付Vol.1727掲載 )
「り」“り”ょう子コンピューターか否かは愚問
『アニーリングマシンは国産勢がおもしろい!』
次世代のコンピューターとして開発競争が過熱している量子コンピューター。カナダのD-Wave Systemsがいち早く製品化したが、注目のプレーヤーは国産勢。量子コンピューターが抱えがちな課題をデジタル回路によって克服。量子コンピューターではないが、同等の処理ができるとして、ビジネスへの適用が進むと期待されている。
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4月23日付Vol.1724掲載 )
編集部が選ぶ
Photos of the Year 2018
日本オラクル前社長の着任で国内RPA市場への注力をアピール
人の代わりにPCのオペレーションを担うRPA(Robotic Process Automation)ツールが、一気に市場を広げた。そうした中で体制強化を求められているのが海外勢。国内SIerなどのパートナーが導入と運用をサポートしていても、RPAツールの開発企業が国内体制を整えているかどうかで、ユーザー企業に与える印象が大きく変わってくるからだ。
RPAツール「Automation Anywhere」を提供する米オートメーション・エニウェアでは、空席となっていた代表取締役社長に日本オラクル前社長の杉原博茂氏が就任。この写真は、その発表での一コマ。米オートメーション・エニウェアのミヒール・シュクラCEOのしぐさが、まさに三顧の礼である(
9月10日号付Vol.1742掲載 )。
オートメーション・エニウェア・ジャパン
杉原博茂代表取締役社長(左)
編集部がひねり出した
WORDS of the Year 2018
新年号で取り上げたキーワード「ERPA」「QIer」を特集
編集部では恒例企画として、新年号でITトレンドを考慮した造語や新語を掲載している。2018年は、「AIoT」「プレミアムクラウデー」「脱ポイント運用」などを掲載した。その中で、特集企画へと昇華したのが「ERPA」「QIer」。流行したかどうかはともかく、新しいキーワードの登場はIT産業の発展に不可欠である。
ERPAは「ERP+RPA=ERPA」の合成語。特集では、ERPをはじめとする基幹業務システムのパッケージ製品にRPAを組み合わせたソリューションを提供する動きをレポートした(
2月26日付Vol.1716掲載 )。
QIerは、クアンタム(量子)インテグレーターの略。量子コンピューターの活用ビジネスを手掛けるベンダーを指す。活用環境が整ってきたことで、今後が期待される(
7月16日付Vol.1735掲載 )。
ゆく年 くる年
今年は、RPAが空前の大ブームとなりました。想定以上の盛り上がりから、人手不足という経営課題が透けて見えてきます。導入後の課題も露呈しつつあるので、ツールのブラッシュアップや導入時の課題解決策も進むでしょう。ブームはいずれ落ち着くでしょうが、ビジネスシーンでは定番ツールとして定着しそうですね。
来年は、5月の改元、10月の消費税増税という大きなイベントがあります。さらに、翌年に控えるWindows 7の延長サポート終了によるリプレース需要、東京五輪の開催と、日本経済への追い風が続きます。IT業界では、東京五輪後のリセッション(景気後退)に対し、楽観ムードが広がっています。結果は、五輪後のお楽しみ。
また、AIや量子コンピューターなどの技術革新が、どんどん加速していると実感する機会が多くなりました。リセッションがなくても、IT業界は少しずつ変わっていくでしょう。2019年は、その始まりの年になるのではと期待しています。
週刊BCNはIT業界の動向を深掘りし、分かりやすく、しっかりお伝えしていきます。19年も、引き続きよろしくお願いいたします。
週刊BCN 編集委員 畔上文昭