「アマビエチャレンジ」で振り返るIT業界
新型コロナウイルスに振り回された今年、流行語となったのはネガティブな言葉が多かったが、その中で希望となったのが、疫病退散のシンボルである妖怪「アマビエ」。さまざまなSNSで、アマビエのイラストと共に投稿され注目のハッシュタグとなった「#アマビエチャレンジ」をキーワードとして、早期のコロナ禍収束を願いながら週刊BCNの特集記事を振り返ってみたい。
“a s a Service”化進むITインフラ
近年、サーバーやストレージのメーカー各社は、オンプレミスのIT機器を売り切りではなく、クラウド感覚の従量課金制で提供する取り組みを進めてきたが、この“as a Service”化の波がいよいよネットワーク製品にも訪れた。ただつながれば良いのではなく、可視化やセキュリティなどが求められる現代の企業ネットワークを、機器の導入から運用まで丸ごとサービスとして提供するベンダーの取り組みを取材した。
(8月31日 vol.1839掲載)
マ イナスとプラスの要因がせめぎ合う
春の段階では誰にも見通せなかった今年のITベンダーの業績。秋に各社が発表する上期(4-9月)決算に注目が集まった。プロジェクトの先送りや凍結があった一方で、デジタル投資の拡大を進めるユーザー企業もあり、市場にはマイナス要素とプラス要素が混在。通年では前年同期並みの着地を見込むベンダーが主流だが、売り上げの中身は従来のITの保守・更新から、デジタルトランスフォーメーション(DX)領域へのシフトが予想される。
(11月23日 vol.1851掲載)
ビ ジネスのニューノーマルとなる“脱ハンコ”
リモートワークを導入し大半の従業員が在宅で仕事をする企業でも、経理を中心とした管理部門だけは出社が続いていることが少なくない。出社せざるを得ない主な理由として挙げられているのが、取引先とやりとりする書類への押印業務。今年はハンコの是非が社会的な議論となったが、週刊BCNでも“脱ハンコ”を取り巻く動向、ITベンダーのビジネスを追った。
(5月25日 vol.1826掲載)
エ ンタープライズもアジャイルに
Webサービスなどの新規事業領域では当たり前になったアジャイル開発だが、DXの流れの中で、大規模な基幹システムの開発やモダナイズにもアジャイルの手法を適用する動きが始まっている。数百人規模が関わる大プロジェクトでどのようにアジャイルの体制を維持するのか、そして、SIerは顧客とどのように関わっていけば良いのか。欧米で標準的なフレームワークとなっている「Scaled Agile Framework」などを中心に探った。
(8月3日 vol.1836掲載)
チ ャレンジしよう、セキュリティの新概念
今年のサイバーセキュリティ市場で最も頻繁に聞かれるキーワードだった「ゼロトラスト」。VPNの代替技術と見られることもあるが、実際には特定の技術を指すのではなく、従来の境界型セキュリティが抱える問題を解決するための包括的な概念だ。実現には複数のソリューションを組み合わせる必要があり容易ではないが、新型コロナでクラウドやモバイルの活用が必須となった今、企業はこのモデルの導入にチャレンジすべきだろう。
(9月7日 vol.1840掲載)
年間アクセス数 トップ10
Webサイト「週刊BCN+」に掲載されたトップインタビューコーナー「Key Person」の年間アクセスランキングを見ると、最も多く読まれたのはWeb会議ツール「Zoom」を提供するZVC JAPANの佐賀文宣カントリーゼネラルマネージャーへの取材だった。ZoomはWeb会議市場では後発ながら、使いやすさや品質が評価され他のソリューションを圧倒する勢いで成長。今年を象徴するランキングとなった。
PV Ranking
1 「Zoom」をあらゆるコミュニケーションの代名詞に
ZVC JAPAN カントリーゼネラルマネージャー 佐賀文宣
(4月6日vol.1820掲載)
2 日立IT事業の急先鋒 世界トップグループ入りの推進役に
日立ヴァンタラ 取締役会長兼CEO 德永俊昭
(1月20日vol.1809掲載)
3 3社の力を集約し全方位のデジタル変革ニーズに応える
日本IBMデジタルサービス 代表取締役社長 井上裕美
(8月24日vol.1838掲載)
4 「富士フイルム」ブランドで世界を獲る
富士ゼロックス 代表取締役社長 玉井光一
(1月27日vol.1810掲載)
5 IBMの全ては顧客の目的実現のためにある
日本IBM 代表取締役社長執行役員 山口明夫
(1月6日vol.1807掲載)
6 サーバー市場にAMDが帰ってきた意味は大きい
日本AMD 代表取締役 林田 裕
(4月20日vol.1822掲載)
7 “らしさ”を失わず、トップベンダーになる
アイレット 代表取締役社長 岩永充正
(6月1日vol.1827掲載)
8 最大の強みは改革に成功した経験値
日本マイクロソフト 代表取締役社長 吉田仁志
(1月13日vol.1808掲載)
9 レガシーシステムは宝の山
グーグル・クラウド・ジャパン 日本代表 平手智行
(12月23日vol.1806掲載)
10 オフィスや現場をデジタルで変革 ヘルスケアと合わせて三つの柱で成長へ
コニカミノルタジャパン 代表取締役社長 大須賀健
(11月02日vol.1848掲載)
TopNews PVランキング
今年本紙に掲載した毎週の1面トップニュースの中から、Webサイト「週刊BCN+」でのアクセスが多かったトップ10を抽出したのが下のランキングだ。
1位となったのは富士ゼロックスの話題。同社は今年年明け早々の1月6日、米ゼロックスとの提携を解消する決定を発表したが、その直後の玉井光一社長への単独インタビューがこの記事だった。同社の経営体制に関する記事は5位にもランクインした。2位は富士通グループが新たに立ち上げたDX新会社・リッジラインズの“お披露目会見”の記事。当時まだPwCコンサルティングの副代表を務めていた今井俊哉氏(4月よりリッジラインズ社長)が新会社の役割を説明した。そのほか、4位に人事のニュースがランクインしているように、業界のビッグネームの行き先には今年も引き続き注目が集まった。
1 富士ゼロックス
足かせを外し、全世界の複合機市場に打って出る
玉井社長「富士フイルムブランドは世界で戦える」役に
(1月20日vol.1809掲載)
2 富士通/リッジラインズ
DXビジネスの成否は“人”の施策で決まる
(1月20日vol.1809掲載)
3 コロナ・ショック
変化の振れ幅を逆手に IT投資の優先順位が激変
(4月6日vol.1820掲載)
4 大手国産ベンダーの“DXシフト”
SAPジャパン・福田社長ら 外資大手幹部が富士通へ 東芝のデータビジネス新会社も外部人材を積極採用
(2月10日vol.1812掲載)
5 富士ゼロックス
国内の営業部門と全販売会社を統合 新会社設立でスピードアップを狙う
(11月9日vol.1849掲載)
ゆく年 くる年
この1年でみなさんのビジネスはどのように変化したでしょうか。本紙記者も、社内打ち合わせからIT企業各社への取材までほとんどがWeb会議になるなど、1年前とはまったく異なる働き方へと変化しました。
2021年には早々にコロナ禍が収束することを願いたいですが、収束時期を正確に予測することは困難であり、加えて、今年起きた働き方やビジネスモデルの変化は不可逆的なものであると指摘されています。また、振り返ってみればリーマン・ショックや東日本大震災があったように、私たちは「未曾有の」と形容されるような事態に数年おきに襲われてきました。「コロナ前」に戻るという前提自体がもはや成り立たず、企業は今後「終わらない変化」に常に対応し続けることが求められます。来年は、そのための新たな変革を開始すべき年になりそうです。
週刊BCNはこれからもIT業界の変化を敏感にキャッチし、分かりやすくお伝えしていきます。引き続きご期待ください。
週刊BCN 記者 日高 彰