Special Feature
年末総決算特集 変革に向け再始動したIT業界
2021/12/20 09:00
週刊BCN 2021年12月20日vol.1904掲載
「ショータイム」で振り返るIT業界
デルタ株が過去最大の感染者数を連日記録する「第5波」に襲われた今年の日本では、「人流」「黙食」といったコロナ禍を象徴する言葉が流行語になった。が、やはり2021年を締めくくるキーワードとしては、米大リーグ・エンジェルスで大活躍した大谷翔平選手をたたえるあのフレーズを選びたい。週刊BCNで毎年恒例の語呂合わせ企画、今年は「ショータイム」で1年を振り返ってみよう。シ フトが進む複合機周辺ビジネス(1月25日vol.1859掲載)
オフィスへの出社が減ったことで複合機やプリンタの稼働率は大きく低下し、事務機メーカーや販売会社のビジネスには深刻な影響が出ている。この2年で働き方は大きく変わり、仮に来年コロナ禍が収束したとしても、プリントボリュームが「コロナ前」に戻ることは考えられない。業界各社は機器や消耗品の販売から、ITソリューションの提供やオフィス空間全体のプロデュースなどへ事業シフトを急いでいる。

ヨー (要)求高まる人材確保(11月22日vol.1900掲載)
デジタル変革が難しい理由として最も多く挙げられるのが「人材不足」だ。外部の優秀な人材は獲得競争が激しく、かといって内部で育成するノウハウを持つ企業は少ない。リッジラインズはこの問題を解決するため、AIによるマッチングの仕組みを活用し、フリーランサーや研究機関所属の人材をDXプロジェクトに登用する取り組みを開始した。企業の課題を解決すると同時に、隠れた才能に活躍の場を提供する機会にもなりそうだ。

タ イミング悪い半導体不足(7月26日vol.1884掲載)
21年度上半期のPC出荷台数は前年同期に比べ大幅減となった。20年度の「GIGAスクール特需」の反動減を除いても振るわない。その理由の一つが半導体不足だ。CPUや液晶パネルといった基幹部品のみならず汎用品も供給が滞り、受注台数を満たすだけの生産が行えない。ニューノーマル需要で、企業からのノートPCへの引き合いは引き続き堅調といい、チャンスロスにつながっている。サプライチェーンの先行きは依然不透明だ。

イー (E)DRがランサムウェアで脚光浴びる(9月13日vol.1890掲載)
サイバー攻撃を伝えるニュースが毎月のように報じられているが、今年特に社会的な影響が大きかったのがランサムウェアだ。病院の電子カルテシステムが暗号化され診察が行えなくなるといった被害が、現実のものになった。対策の一つとして、PCやサーバー上での不審な挙動を検知できるEDR製品が改めて脚光を浴びている。一般企業がEDRを使いこなすのは容易ではないが、運用を委託できるMDRサービスの登場で導入のハードルが下がった。

ム ダなくクラウドを使う(12月6日vol.1902掲載)
コロナ禍でSaaSの利用は従来以上に活発となった。業務で利用するSaaSの数が10以上という企業も珍しくない。しかし、矢継ぎ早にSaaSを導入したことで、使っていないアカウントが有効なまま放置され無駄なコストを生んでいるケースや、入社・退職の際のアカウント管理作業が大きな負担になるといった問題も発生している。「SaaS多すぎ」問題を解決する、SaaS管理ソリューションの需要は来年以降ますます高まりそうだ。

週刊BCN連載 Key Person
年間アクセス数トップ10
週刊BCNのトップインタビューコーナー「Key Person」。Webサイト「週刊BCN+」に掲載された同コーナーの記事中、今年最も多くアクセスされたのは、東芝グループでデジタル戦略の責任者を務める島田太郎常務へのインタビューだった。島田常務はPOSから得られる情報を軸とした同社のデータ戦略について展望を語るとともに、現実世界のフィジカルデータまでを包括するプラットフォーマーは世界を見回してもまだいないと強調。東芝グループがこの分野でのデファクトスタンダードを目指すと意気込んだ。
PV Ranking
1 世界の次のデファクトを本気で取りにいく
東芝 執行役上席常務最高デジタル責任者/東芝デジタルソリューションズ取締役社長 島田太郎
(1月18日vol.1858掲載)
2 富士フイルムのブランドで世界の市場に進出
富士フイルムビジネスイノベーション 代表取締役社長CEO 真茅久則
(5月31日vol.1876掲載)
3 日本企業はもっと成長できる
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ 代表取締役社長 垣原弘道
(4月12日vol.1870掲載)
4 5カ年経営構想は ITソリューションが主軸
キヤノンマーケティングジャパン 代表取締役社長 足立正親
(6月14日vol.1878掲載)
5 日本市場へのコミットを加速させる
Okta Japan 代表取締役社長 渡邉 崇
(3月1日vol.1864掲載)
6 本当の意味でのas a Serviceを提供する
日本ヒューレット・パッカード 代表取締役 社長執行役員 望月 弘一
(1月18日vol.1858掲載)
7 NECにとっての本質的な成長を追求する
NEC 代表取締役執行役員社長兼CEO 森田隆之
(1月4日vol.1856掲載)
8 提案力の強化で事業成長につなげる
ゼットスケーラー 代表取締役 金田博之
(3月15日vol.1866掲載)
9 テクノロジーだけでなく カルチャーも含めてDXを提供する
レッドハット 代表取締役社長 岡 玄樹
(2月8日vol.1861掲載)
10 ソフト開発力でNTTグループ戦略の一翼を担う
NTTコムウェア 代表取締役社長 黒岩真人
(8月23日vol.1887掲載)
Top News 年間アクセスランキング
「週刊BCN」各号のトップニュースの中から、Webサイト「週刊BCN+」でのアクセス数が多かった記事トップ5は以下の通り。1位・2位は米ゼロックスとの技術契約を解消し、今年4月1日付で富士ゼロックスから社名変更した富士フイルムビジネスイノベーションと、同社の販売会社に関する記事。国内有数の事務機・ITソリューションベンダーの大規模な事業変革とあって多くの読者の関心を集めた。3位はコロナ禍で昨年から導入企業を増やし続けているZoom日本法人の戦略に関するニュース。販売パートナー網の拡充が功を奏し急成長しており、今後は公共系の顧客も増やし社会インフラとして位置付けられる存在を目指すとしている。
1 富士フイルムビジネスイノベーション
新体制が始動、世界市場をターゲットに新製品も続々投入、国内は地域密着で勝負
(4月12日vol.1870掲載)
2 富士フイルムビジネスイノベーション
地域密着と課題解決の二本柱で伸ばす 1万人のリソースを統合的、機動的に運用
(7月26日vol.1884掲載)
3 ZVC Japan(Zoom)
日本法人は2022年半ばに200億円突破の勢い チャネル構築の巧さが急成長を支える
(7月5日vol.1881掲載)
4 キヤノンマーケティングジャパン
複合機・プリンタ市場の逆風にどう立ち向かう ITソリューションを中核に収益構造を転換
(5月3日vol.1873掲載)
5 富士通
フォーメーション再編は最終章に 富士通Japanは22年度営業利益率10%を目指す
(3月8日vol.1865掲載)
ゆく年くる年
新型コロナウイルスの感染拡大は人類の歴史に残る大厄災と言えるでしょう。いったんは落ち着きを見せているとはいえ、新たな変異株による“第6波”襲来も懸念されており、流行し始めてから2年近くが経過した今も、終息時期を見通すのは困難な状況が続いています。IT業界を振り返ってみれば、業績を伸ばしている企業も決して少なくはなく、来年以降は明るい見通しを描く経営者が増えているように見えます。しかし、コロナ禍での好業績は、急きょを迫られたテレワーク環境の整備など、ユーザー企業が外部要因に対応するために仕方なく実施した投資に支えられた面もあります。その“特需”が一巡したことで、これからITベンダーに求められる役割は、ユーザー企業の次のビジネス創出につながるデジタル変革の支援へとシフトしていくことでしょう。単純なITツールにただ「DX(デジタルトランスフォーメーション)」というラベルを貼っても、もはや売れる時代ではありません。
来年以降、ITベンダーでもユーザー企業の間でも、変革に成功した企業とそうでない企業の差が色濃く表れてくると考えられます。DX成否の分水嶺はどこにあるのか、週刊BCN編集部は追いかけていきます。引き続きご期待ください。
(週刊BCN 副編集長 日高 彰)

IT業界に大きな影響を与え続けている新型コロナ禍。プロジェクトの遅延や一時保留といった打撃があった一方、テレワーク環境の整備など特需につながった面もある。昨年がコロナへの対応に迫られた“混乱期”だったとすれば、今年はデジタル変革に向けたアクセルを再び踏み始める“再始動期”だったと言えるだろう。2021年のIT業界がどのように揺れ動いたのか、週刊BCNの紙面を通じて振り返る。
(構成/日高 彰)
DXで変わるITビジネスの構造
本紙7月5日・1881号の特集「『共創』ビジネスがDXで活性化 ITベンダーとユーザー企業の合弁事業」では、近年デジタルトランスフォーメーション(DX)の文脈で相次いで設立されている、ITベンダーとユーザー企業との共同出資による新たなIT事業会社の実例を紹介した。
従来もITベンダーが事業会社のIT子会社に出資するケースはあったが、それらは主にユーザー企業のシステム運用をアウトソーシングすることが目的だった。これに対して昨今の合弁事業は、最新のテクノロジーや外部の知見なども積極的に取り入れ、ユーザー企業のデジタル戦略の立案にも積極的に関与していく考え方のものが多い。合弁会社は受託業者として仕事を請け負うのではなく、デジタル変革の仕掛け役・実行役となるわけだ。今年の具体的な事例としては、資生堂とアクセンチュア、日本IBMとJTB、富士通とファナックとNTTコミュニケーションズなどの合弁があった。
逆に、非IT企業が、事業の現場で生まれたIT活用のアイデアを商品化し、外部への販売を開始するといった例も見られる。いわば、「非IT企業のITベンダー化」である。6月28日・1880号では、特集「『非IT企業のIT事業』に学ぶDX時代のITビジネス」の中で、自動車部品メーカー・旭鉄工の改善活動から生まれたIoTソリューションや、三重県伊勢市の老舗食堂・ゑびやが開発した店舗管理ツールなどを紹介した。
DXが進み、デジタル戦略が企業の事業戦略そのものに近づけば近づくほど、ITベンダーとユーザー企業の関係は、発注者と受託者という単純なものではなくなっていく。来年は新たな形をもつITビジネスの実例がより多く生まれてくることだろう。
ローコード/ノーコードと「内製化」がキーワードに
最小限のプログラミング作業で、もしくはプログラミング作業なしでアプリケーションを開発できる、ローコード/ノーコード開発ツールも、今年のIT業界で注目のキーワードとなった。そこには、ユーザー企業がITベンダーの力を借りることなく、現場主導でシステム開発にまい進できるようになれば、業務や事業の変革に必要なアプリケーションをより素早く手に入れることが可能になるという期待がある。しかし、ユーザー企業自身がシステム開発のスキルを身につけた場合、ITベンダーの仕事が消滅することにならないか。3月1日・1864号の特集「ローコード/ノーコード開発による『内製化支援』のあり方」では、ローコード/ノーコード開発ツールを活用した内製化支援サービスを手がけるベンダー3社に取材し、内製化の進展とSIビジネスの将来を占った。
取材先の3社はいずれも、「内製化支援を提供することでITベンダーの仕事はむしろ拡大する」との見方を示した。内製化のニーズが大きいのは業務が頻繁に変化する現業部門や、競合他社との差別化につながる部分であり、安定稼働が求められるバックオフィス部門のシステムは引き続きITベンダーに頼るケースが多い。また、いかに開発のハードルが下がるといっても、ユーザー企業だけでできることには限界がある。ITベンダーが内製化支援という形でユーザーと関係を築いていれば、ユーザーが新しいことをやりたいときにはおのずとそのベンダーに声がかかる形となり、むしろビジネスの継続性を強化できるという格好だ。
また、10月11日・1894号ではローコード開発基盤の導入で内製化シフトに成功した学習塾・東京個別指導学院の事例をレポート。同社では内製化によってシステムのブラックボックス化を防ぐとともに、データ活用の推進を目指している。
この記事の続き >>
- 政府クラウドが始動、しかし国産は不在
- 「ショータイム」で振り返るIT業界
- → シ フトが進む複合機周辺ビジネス
- → ヨー (要)求高まる人材確保
- → タ イミング悪い半導体不足
- → イー (E)DRがランサムウェアで脚光浴びる
- → ム ダなくクラウドを使う
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