IT業界の『ジ・ャ・ッ・カ・ル 』
2019年、日本列島を感動の渦に巻き込んだラグビーW杯。ポジティブな意味で「にわかファン」が増え、ラグビーのルールや用語も急速に認 知度が上がった。その一つがユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされた「ジャッカル」だ。守備側が攻勢に転じるこのプレー、成立すれ ば観客の盛り上がりもひとしお。IT業界は事業環境が良好で多くのベンダーが業績好調だが、ビジネスモデルのアップデートがうまくいかず、中長期的な成長に向けて不安を抱え、実際は守勢にまわっているベンダーも少なくないのが実情だ。今こそジャッカルにトライする時!というこ とで、本紙の特集記事から反響の大きかったものを「ジ・ャ・ッ・カ・ル」で振り返る。
ジ MWCで見えた5G(“ジ”ー)時代のITインフラ
楽天が世界初の「完全仮想化ネットワーク」
20年は5Gの商用サービス元年になる。5Gは単に携帯電話のための高速・大容量な次世代通信サービスで はなく、低遅延、多接続といった特徴も有し、先端ITと融合することで産業や社会インフラの飛躍的な高度化にも貢献できる技術として期待される。今年2月にバルセロナで開催された世界最大のモバイル通信イベント「MWC19 Barcelona」のレポートから、5Gを取り巻くビジネスエコシステムの現状を探った。楽天グループが発表した仮想化技術を全面採用したモバイルネットワークインフラも大きな注目を集めた。
(3月18日付Vol.1754掲載)
ヤ ビジネスに“や”く(役)立つAIとの向き合い方
PoCでは終わらせない!
あなたは今年、何回タピりましたか? 女子中高生を中心に第3次ブームを迎えたというタピオカ。IT業界の第3次ブームと言えばAIである。ただし、そのブームもすでに数年が経過しているわけだが、経営者の「AIで何かやれ」という号令を受けて、いまだにPoCを繰り返しているだけの企業も多い。ビジネスに役立つAIとの向き合い方とはどのようなものなのか、AIビジネスを手掛けるITベンダーの取り組みやAI研究の専門家への取材から探った。
(10月14日付Vol.1796掲載)
ツ イ“ッ”ポまえだのよろしくスタートアップ特集版
独自のアイデアで世界を目指す
非連続の変化の時代ともいわれる現在、新興企業がイノベーションに果たす役割は従来以上に大きい。週刊BCNもこうした状況を踏まえ、注目のスタートアップ企業を継続して追いかけてきた。16年7月から18年1月まで掲載した連載「イッポまえだのよろしくスタートアップ」は一部でカルト的な人気を博したが、今年3月に特集で限定的に復活。これが呼び水となり、8月には連載のセカンドシーズンがスタートした。
(3月11日付Vol.1767掲載)
カ “カ”スタマーサクセスに注目
サブスクリプション型ビジネスの成否を握る
クラウドサービスなどでサブスクリプション型ビジネスが一般的になるにつれ、その成否を握るポイントとし て、カスタマーサクセスに注目が集まるようになってきた。「サブスクリプションの本質は、顧客の成功体験を 創出し、長くサービスを使ってもらうことだ」という識者もいる。サブスクリプション型ビジネスで成功しているSaaSのトップベンダーや成長企業に、カスタマーサクセスのための具体的な取り組みを取材した。
(7月1日付Vol.1782掲載)
ル 改めて考え“る”プロセス最適化
DXへの第一歩をどう踏み出すか?
デジタルトランスフォーメーション(DX)の気運が盛り上がる中で、そもそもDXを実現するためには何から始めれば いいのかという疑問に多くの企業はぶちあたる。19年は、その解決策として改めて業務プロセス最適化ソリューションにスポットが当たった年だった。特に大きな盛り上がりを見せたプロセスマイニングツール市場を中心に、DXに向かう第一歩を支援するプロセス最適化ソリューションの市場を2号にわたって特集した。
(11月25日付Vol.1802、12月2日付Vol.1803掲載)
週刊BCN 連載KEYPERSONの
年間アクセス数トップ10
週刊BCNのトップインタビューコーナーである「KeyPerson」に掲載した記 事を、ウェブサイト「週刊BCN+」のアクセス数でランキング。アクセス数1位は、リコージャパン代表取締役社長執行役員CEOである坂主智弘氏のインタビュー。リコーグループの国内販売を担う同社トップが見据えるのは、ITを核にしたオープンなプラットフォームビジネスの世界だ。
PV Ranking
1 複写機ファーストではないICTを売るのだ
リコージャパン 代表取締役社長執行役員CEO 坂主智弘
(7月29日付Vol.1786掲載)
2 SIer特有の“現場感”を大切にプロセス重視で結果を出す
キヤノンITソリューションズ 代表取締役社長 金澤明
(7月8日付Vol.1783掲載)
3 激動の市場で改革のアクセルをさらに踏み込む
富士通 代表取締役社長 田中達也
(1月8日付Vol.1709掲載)
4 1万人のSAPコンサルタントで脇を固める
NTTデータグローバルソリューションズ 代表取締役社長 磯谷元伸
(2月11日付Vol.1763掲載)
5 売り物は『変革の支援』
EMCジャパン 代表取締役社長 大塚俊彦
(3月4日付Vol.1766掲載)
6 モノを扱う半導体商社からサービスを扱う半導体商社へ
菱洋エレクトロ 代表取締役社長 中村守孝
(2月4日付Vol.1762掲載)
7 『新技術』を『新ビジネス』に結びつける
NTTデータ 代表取締役社長 本間洋
(1月7日付Vol.1758掲載)
8 不可能を可能にしたパートナー戦略の“逆転の発想”
インフォマティカ・ジャパン 代表取締役社長 吉田浩生
(3月25日付Vol.1769掲載)
9 モノ+コト訴求の新販売戦略
エプソン販売 代表取締役社長 鈴村文徳
(6月10日付Vol.1779掲載)
10 サブスクリプションで進む『モノからコトへ』から『コトから価値へ』の変革
ビープラッツ 代表取締役社長 藤田健治
(3月18日付Vol.1768掲載)
週刊BCN TOP Newsの
年間アクセス数トップ10
週刊BCNは昨年8月、ニュース記事をフロントページに掲載する形に リニューアルした。専門新聞としての原点に立ち返り、毎週最もバリューのある話題を最初に読んでもらおうという意図だ。そのトップニュース も、ウェブサイト「週刊BCN+」のアクセス数でランキングしてみた。アクセス数1位となったのは、今年8月に稼ぎ頭だったHRパッケージ事業 を売却して、SCMと会計を軸に経営の立て直しを図っているワークスア プリケーションズの記事。カリスマ的存在だった創業者で前CEOの牧 野正幸氏が退任後、新たに就任した井上直樹CEOが21年6月期以降の黒字転換を目指すと宣言したのは大きなインパクトがあった。
PV Ranking
1 ワークスアプリケーションズ
立て直しに手応えあり 来年度以降の黒字化目指す
(11月4日付Vol.1799掲載)
2 米オラクル
クラウド戦略を大きく転換 マイクロソフト、ヴイエムウェアと手を結ぶ
(9月23日付Vol.1793掲載)
3 NTTコミュニケーションズ
海外事業再編は「第二の創業」クラウドなど非通信の売上比率を過半に
(11月4日付Vol.1799掲載)
4 NECの海外事業
赤字の“ミニNEC”を成長エンジンにできるか 欧州ベンダーを買収
(1月14日付Vol.1759掲載)
5 国産大手ベンダーの2018年度決算
成長軌道への回帰いまだ遠く―― 富士通、NEC
(5月13日付Vol.1775掲載)
6 NTT東日本
EDI移行を促す周知活動を本格化「NTT都合」重く受け止め
(3月4日付Vol.1766掲載)
7 SAPが買収したクアルトリクスとは何者か
ビジネスアプリケーション市場で勝ち続けるための切り札に?
(6月24日付Vol.1781掲載)
8 レッドハット
楽天のモバイル網にOpenStackを提供
(3月11日付Vol.1767掲載)
9 富士通
営業利益率10%必達へ DX支援の新会社を設立
(10月7日付Vol.1795掲載)
10 UiPath
鮮明になった“RPAI”のロードマップ
(8月5日付Vol.1787掲載)
影のRanking No.1
富士通グループ再編の情報に大きな注目
今回紹介したトップニュースのアクセスランキングは、19年に発行した週刊BCNのトップニュースの中で のランキングだが、実は“影の1位”とでも言うべき記事がある。18年の最終号に掲載したトップニュース「富士 通、主要子会社を吸収・統合か、1月就任の各社新社長が早期に見極め」だ。この記事のアクセス数は、今回ランキング1位だったワークスアプリケーションズの記事よりも多い。富士通グループの再編・統合には業 界の多くの人が注目していたという ことだろう。1年後の発行となった本号では、その続報とでもいうべき記 事を3面に掲載している。
ゆく年 くる年
読者のみなさんにとって、今年はどんな1年 だったでしょうか。
さまざまな新興技術が社会実装の段階に入り、ビジネスモデルや企業文化までを先進の IT活用を前提に変革していくDXの気運も一層 高まりました。
5月の改元、10月の消費税率改正、そして約1カ月後に控えるWindows 7の延長サポー ト終了というビッグイベントはIT業界にも特需 を運んできました。20年はいよいよ東京五輪。「2025年の崖」まではIT投資が伸びていくのではという楽観論も聞かれますが、“祭のあと” の社会状況がどうなるかは未知数の部分もあ ります。多くのITベンダーは目先の案件が豊富ですが、今のうちに中長期的な成長に向けた 基盤を固めるべく、変革のための投資をすべ きだとも言えそうです。
週刊BCNは20年も、IT業界の動向を独自の 視点で深く掘り下げ、分かりやすくお伝えしていきます。引き続き、ご愛読ください。
週刊BCN 編集長 本多和幸